インパルスのルディ・ヴァン・ゲルダー録音
60年代前半、「インパルス」のレコーディングを担当したのが、
「ブルーノート」と同じルディ・ヴァン・ゲルダー。
放送関係の技術者が担当することが多かったレコーディングですが、
ヴァン・ゲルダーは50年代から専門的に行っていた数少ない人。
そうした彼の安定期に入った〈ステレオ録音〉によるジャズを
ここで堪能することができます。
50年代には、両親の家の居間を改装して
レコーディングスタジオにしていましたが、
ここでの収録は新しく建築した
レコーディング専用スタジオを中心に行われています。
そのスタジオは、高い天井にも象徴されるように、
条件としてはかなり良好なものとなっていたようで、
空間の表現、奥行きのイメージにおいて、
50年代のヴァン・ゲルダー収録に比べて
一日の長があるように思えます。
50年代に活躍したジャズレーベルと比べて「インパルス」は
企画勝負の新しいスタイルによるレコードを次々と発表しました。
ジャズ・クラブでやっていた演奏を
そのままスタジオ収録するのではなく、
一つ一つの作品に趣向を凝らし、
プロデューサーがアイデアを絞り出しながら、
レコードならではのミュージシャンの
魅力的な個性を引き出す努力をしていたのです。
そうした作品の意図が、
収録されたサウンドやステレオ音場に明確に示されているところが
「インパルス」の興味深いポイントとも言えるでしょう。
その収録音に対しては通常のCD以上に、
Super
Audio
CDのフォーマットがさらなる魅力を引き出せるように思えます。
ヴァン・ゲルダーの示すジャズ音場はそのままに、
より深く、ミュージシャンの駆使する楽器の音色、
微妙な表現を求めてマスタリングを心がけました。
Super Audio CDハイブリッド化と周辺機器・ケーブル
今回のSuper Audio
CDハイブリッド化に当たっては、
これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、
最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、
妥協を排した作業が行われています。
特にDSDマスタリングにあたっては、
DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、
入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、
また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、
貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。
聴き終えても、またすぐ繰りかえし聴きたくなる衝動(インパルス)!
珀琥色になるまで寝かせた年代物のウイスキー。
その封を切るに似て、名ジャズレーベルのマスターサウンドが、
半世紀の眠りから醒めた。
60年代、あのコルトレーン、ソニー・ロリンズ、オリヴァー・ネルソン、
ジョニー・ハートマンといったジャイアンツたちは、
活躍のステージを求め“インパルス”に籍を置いた。
その天才たちの往時の名演奏が、
エソテリックのマスターサウンドで、今蘇る。
ブルーノートレーベルから船出したグレイトジャズを巡る豪華クルーズ。
今回は、大物エンジニアのルディ・ヴァン・ゲルダーによる
インパルスレーベルの歴史的録音より、
珠玉の名テイク6タイトルを選び
リマスター、SACD
化するという、わくわくするゴールを目指した。
当時、インパルスに移籍して新境地を目指すコルトレーンは、
激しくブローするお家芸の一方で、
バラード調を詩情豊かに瑞々しく歌い上げるにあたり、
エンジニアのゲルダーと共同して録音にあたった。
これが一連の名テイク誕生の契機となる。
コルトレーンは、相性というだけでなく、
ゲルダーの目指す先が自らの音楽と
同じゴールと感じていたのかもしれない。
自宅に広い天井空間を確保した
レコーディングスタジオを新調するほどのこだわりのゲルダーは、
ジャズ領域で録音芸術(あえて芸術と言わせていただく)の
新天地を開拓した魁(さきがけ)の一人であり、そのレコード群は、
ジャズ・ジャイアンツとの邂逅を聴くたび実感し、
その人なりに感動を深め楽しむ
オーディオファイルシップへと誘う名盤として愛された。
実際マスターテープには、
今日のデジタルレコーディングスタジオでの
収録ではかえってスポイルされてしまうようなおおらかな臨場感、
ナチュラルなソノリティ、セッションの息遣いが手垢つかずのまま収録されていた。
そうと判って、我がエソテリックは技術とノウハウを動員。
その甲斐あって、眼前それも間近に歴史的名演奏が繰り広げられる
リアルな“空気感”がそこここに感じられることが、嬉しい限りである。
そうとなれば、さっそくオーディオリスナーである諸氏の手に委ね、
嗚呼これぞJAZZSOUNDひとため息を漏らしてあらためて聴きたくなる
“インパルス”(衝動)を、思う存分、味わって頂くこととしよう。
エソテリック株式会社 SACDプロデューサー 大間知 基彰
JOHN COLTRANE QUARTET
BALLADS
ESSI-90133
COUNT BASIE
AND THE KANSAS CITY
7
ESSI-90137
JOHN COLTRANE
AND
JOHNNY
HARTMAN
ESSI-90138