SACD ハイブリッド

バーンスタインとウィーン・フィルの

ベートーヴェン・チクルスの総決算。

熱気渦巻くウィーン国立歌劇場でのライヴ・レコーディング。 

 
べートーヴェン:交響曲第9 番「合唱」

レナード・バーンスタイン 指揮

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 他

価格:4,000円(税込)
ESSG-90283[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!



■切っても切れないベートーヴェンとバーンスタイン

指揮者としてのみならず、作曲家、ピアニスト、

そして何よりも音楽を通じての巨大なコミュニケーターとして

20世紀に巨大な足跡を残したレナード・バーンスタイン(1918-1994)。

 

ベートーヴェンの作品はバーンスタインの中心的なレパートリーであり、生涯にわたって取り上げ続けました。

1954年、アメリカのテレビ・ドキュメンタリー・シリーズ「オムニバス(OMNIBUS)」への

初出演の回でバーンスタインはベートーヴェンの交響曲第5番の第1 楽章を取り上げ、

巨大に拡大されてフロアに敷かれた楽譜の上で、ピアノを弾き、

オーケストラを指揮して作品を分析する番組構成は大きな話題となり、

バーンスタイン自身の「ヤング・ピープルズ・コンサート」、

あるいは20世紀後半の音楽をTV番組で扱う制作手法全般に大きな影響を与えました。

この瞬間にバーンスタインとベートーヴェンとは不可分の関係となり、

ニューヨーク・フィル音楽監督時代にはコロンビアで交響曲全曲(第7番は2度)、

序曲、協奏曲、ミサ・ソレムニスにいたる主要オーケストラ曲を全て録音に残し、ベストセラーとなりました。

 




バーンスタインの後半生を押し上げたドイツ・グラモフォンとの契約の本格的始動    

1969年にニューヨーク・フィルの音楽監督を辞し、

作曲とヨーロッパでの指揮活動の比重を広げはじめたバーンスタインにとって、

録音面で何よりも重要な転機となったのは1976年に開始されたドイツ・グラモフォンとの長期契約でした。

ニューヨーク・フィルとコロンビアにオーケストラレパートリーの

ほぼすべてを録音しつくしていたバーンスタインでしたが、

ヨーロッパのオーケストラとの録音は数えるほど。

1970年代に入ってヨーロッパでの演奏活動と

その結果としての録音活動をもっと活発化させたかったバーンスタイン側の希望と、

アメリカでのシェア拡大およびカラヤンに次ぐ人気指揮者獲得を狙っていた

ドイツ・グラモフォンの商業的な意向とが合致することで、

空前の録音プロジェクトが実現することになったのです。

 

ベートーヴェン、シューマン、ブラームス、マーラーの全交響曲、

ハイドンからショスタコーヴィチに至る主要交響曲のほか、

ミュージカルやオペラを含む自作の再録音も含む膨大な作品がこの契約で録音され、

バーンスタインのイメージを「アメリカを代表する指揮者」から

「カラヤンと並ぶ世界的な巨匠」へと変貌させたのでした。

しかもその多くが録音と並行してヨーロッパを代表する映像制作会社ユニテルによって映像でも収録され、

全世界でTV放送されたほか映像ソフトとしても発売されるなどメディアミックスが展開され、

文字通り「音楽家バーンスタインの遺産」となったのです。




ウィーン・フィルとのベートーヴェンの総決算

バーンスタインのドイツ・グラモフォンへの録音は1976年7月のボストン響との

リスト「ファウスト交響曲」で開始されました。

ウィーン・フィルとのプロジェクトは、「ファウスト交響曲」と

カップリングするための翌1977年4月のボーイト「メフィストーフェレ」のプロローグが初めてで、

いよいよ同年9月の第5番を持ってベートーヴェンの交響曲全集の収録が開始されました

(LP 8枚組の全集としてまず発売され、その後単売されるという筋立てもグラモフォンの戦略でした)。

 

1978年2月の第2・3番、1978年10〜11月の第1・4・6・7・8番を経て、1979年9月、

この全集の最後に録音されたのが第9番でした。この間1978年1月には

ウィーン国立歌劇場で「フィデリオ」を上演し、それと並行してこのオペラの全曲録音を行うなど、

3シーズンにわたってウィーンでベートーヴェン作品を立て続けに取り上げていたバーンスタインにとって

第9番はいわばプロジェクトの総決算ともいえる位置づけとなったのでした。

そのためか指揮者・オーケストラ双方がこの第9 番にかける意気込みは凄まじく、

第1楽章から実に密度の濃い重量級の演奏が続きます。

弦はフレーズ間での緊張が途切れないように極限まで音価を延ばし、

金管は美感をはみ出すのを厭わず強奏され、

ティンパニの乾坤一擲の決めが大きな頂点を築き上げています(再現部やコーダ)。

強靭なリズムの主部と流麗なトリオとが対照される第2楽章を経て、

第3楽章では一転してじっくりしたテンポを取り、

楽譜の指定が「アダージョ・モルト(ひじょうにゆっくりと)」であることに改めて目を見開かせてくれます。

第4楽章のレチタティーヴォの雄弁さ、バリトン独唱(クルト・モルの柔らかな歌唱)の前の緊迫感、

テノール独唱(「フィデリオ」でもフロレスタンを歌ったルネ・コロのヒロイックな表情が印象的)と

男声合唱を伴って盛り上がる行進曲、そして「歓喜の歌」の賛歌へと曲想を抉りぬき、

壮麗な二重フーガを経て最後のプレスティッシモへとなだれ込んでいきます

(演奏後の拍手はカットされていますが、映像では1列目に座っていた

高齢の男性が叫びながら立ち上がる様子が映し出されているほどの熱狂ぶりで、

バーンスタインもコンサートマスターふたりと抱擁を交わすなど、高揚感に満ちた様子が捉えられていました)。

 



ライヴの熱気とセッションの緻密さを両立させた完成度の高さ    

 

この演奏はウィーン・フィルの定期ではなく、ウィーンの国際センター(国連機関が入る建築群)の

オープニングを記念する特別コンサートで、ウィーン国立歌劇場で開催されました。

同歌劇場は典型的な馬蹄形のヨーロッパ・スタイルの会場で収容人数は約2,300人と、

ウィーン・フィルの本拠地であるムジークフェライン(約1,750席)より多く、

平土間と5層バルコニーの構造になっているため、空間容積は大きい会場ともいえます。

 

バーンスタインはこの交響曲では管楽器を倍(4管)に増やしており、

ウィーン国立歌劇場合唱団を含む大人数の演奏にはむしろムジークフェラインよりも

ふさわしい場所であったといえるかもしれません。演奏自体が放つ圧倒的な熱気はそのままに、

演奏者や聴衆のノイズを極力取り除くことで(バーンスタインの唸り声や指揮台を踏む音、

曲間の会場ノイズや演奏後の拍手も除かれています)繰り返し聴くに足る

完成度の高い演奏に仕上げられているのは、ドイツ・グラモフォンによるバーンスタインの

ライヴ録音に共通する特徴です。歌劇場の常として会場の残響感は少ないはずですが、

この録音ではおそらくポストプロダクションの段階で響きが補われており、聴感上の不足は全くありません。

マルチトラック収録の長所を極限まで生かし、

独唱・合唱・そしてオーケストラの各パートの明晰さをそのままにステレオにミキシングされているため、

トゥッティになっても音楽の微細な動きを精緻に聴き取ることができるのも大きなポイントです。

 

2015年にはSuper Audio CDシングルレイヤー化され、

さらに2017年にはオリジナル・マルチ・マスターから新たにリミックスされた上でリマスターされていますが、

Super Audio CDハイブリッド盤でのリリースは今回が初めてとなります。

今回のハイブリッド化に当たっては、これまで同様、使用するマスターの選定から、

最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。

特にDSDマスタリングにあたっては、「Esoteric Mastering 」を使用。

入念に調整されたESOTERICの最高級機材

Master Sound Discrete DACとMaster Sound Discrete Clockを投入。

またMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。

 



「燃え上がるような生命感と柔軟さが見事に一つになった演奏」    

「ウィーン・フィルが持つ伝統的様式に、

バーンスタインの燃え上がるような生命力を加えた演奏で、

今もベートーヴェンの交響曲の盤を選ぶ場合に真っ先に挙げなければならないものだ。

どの曲もフレッシュそのもので、ベートーヴェンなど聴き飽きた、という人にも強くアピールする表現。

バーンスタインのライヴに特有の、激しさと優しさの交錯も魅力的だ。」

 『レコード芸術』1980年6月号・特選盤/80年度レコード・アカデミー賞受賞[全集]

 

「70年代後半のバーンスタインの代表録音となったベートーヴェン交響曲全集の最後にそびえる巨峰。

60年代において最も独創的な演奏表現を見せたバーンスタインもこの時期には、

充実した安定感のある表現に達し、ディオニッソス的な熱狂よりは、

アポロ的な調和の中に音楽美を追求する姿勢を示すようになった。

交響曲指揮者としての彼の一つの結論と言えるかもしれない。

ウィーン・フィルの響きが美しく、ソリストの名唱も光る。ライヴならではのラストの高揚がすばらしい。」

 『クラシック・レコード・ブック Vol.1』1980年

 

 「長く豊かな伝統を持つヨーロッパでの新たな活動が、

折しも円熟期を迎えたバーンスタインにもたらした芸術的、

人間的な深化と充実ぶりをもっとも端的に示したのがこのウィーン・フィルとのベートーヴェンであろう。

バーンスタインならではの燃え上がるような生命感とウィーン・フィルの柔軟さが見事に一つになった演奏は、

まことに強い表出力と雄大なスケールをもち、深く熱い共感にしなやかに貫かれている。

レコーディング用のライヴ録音という方式がとられているのもそうした生きた演奏の感動を

生き生きと雄弁に伝えている。」

 『クラシック不滅の名盤800 』1997年

 

 「バーンスタインはウィーン・フィルというオーケストラを通してヨーロッパ音楽の伝統を身をもって体験し、

そこに自らの個性を投影して晩年の円熟の境地に到達していったと思う。

この録音当時のウィーン・フィルは確固とした独自のベートーヴェンの演奏様式を持っていた。

それに、バーンスタインの異質のカリスマが触媒となって働き、

生命力に満ち溢れた強いメッセージを発する音楽を生み出している。

ピリオド系のベートーヴェンを体験した今日ではやや重厚に過ぎる印象もあるけれど、

彼の音楽に耳を傾けていると、そうした違和感は瞬く間に払拭される。

ライヴ特有の高揚感も大きな魅力だ。」

 『クラシック不滅の名盤1000 』2007年

 

  

■収録曲

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)

交響曲 第9番 ニ短調 作品125《合唱》

1. 第1楽章:Allegro ma non troppo, un poco maestoso

2. 2楽章:Molto vivace

3. 第3楽章:Adagio molto e cantabile

4. 第4楽章:Presto

5. 第4楽章:Presto – “O Freunde, nicht diese Töne!” – Allegro a ssai

 

ギネス・ジョーンズ(ソプラノ)

ハンナ・シュヴァルツ(アルト)

ルネ・コロ(テノール)

クルト・モル(バス)

ウィーン国立歌劇場合唱団

合唱指揮:ノルベルト・バラッチュ

指揮:レナード・バーンスタイン

 

[録音]1979年9月2日-4日、ウィーン、ウィーン国立歌劇場でのライヴ・レコーディング

[初出]DG 2740 216(1980年)

 

[オリジナル・レコーディング]

 [プロダクション]ハンノ・リンケ  

[レコーデイング・スーパーヴィジョン]ハンス・ウェーバー  

[バランス・エンジニア]クラウス・シャイベ

 

 [Super Audio CDリマスタリング]

 [Super Audio CDリマスター]2023年9月 エソテリック・オーディオルーム、「Esoteric Mastering」システム

  [Super Audio CDプロデューサー]大間知基彰(エソテリック株式会社)

 [Super Audio CDアソシエイト・プロデューサー]吉田穣(エソテリック株式会社)  

[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア]東野真哉(エソテリック株式会社)  

[解説]浅里公三、広瀬大介

 [企画・販売]エソテリック株式会社

 [企画・協力] 東京電化株式会社