SACD ハイブリッド

一音に重み・凄みを湛え、

聴く者を音楽の深みへと誘うツィマーマンのショパン 。 

 
ショパン

バラード(全4曲)、舟歌、幻想曲

クリスティアン・ツィマ−マン(ピアノ)

価格:4,000円(税込)
ESSG-90280[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

大好評販売中!



■今最も聴き逃せないピアニスト、ツィ マーマン

現在、世界のクラシック音楽界で最も高い評価を受けているピアニストの一人、

クリスティアン・ツィマーマン 1956.12.5生まれ)。

1975 年のショパン国際ピアノ・コンクールで史上最年少の

18歳で優勝して世界的な注目を浴び、以来第一線で活躍しています。

 

最近では、昨年「高松宮殿下記念世界文化賞」を受賞して日本でも話題になりました。

ツィマーマンは、自分が指向する完璧な演奏の実現、

特に楽器を完全に自分のコントロールできるよ うにしておくことにこだわり、

演奏に際しては自分の楽器やアクションを世界中に運搬し、

さらに馴染みの調律師とともに演奏会場の特性に合わせて調整を重ねることで

自己の理想とする演奏を目指すという徹底ぶりでも知られています。

取り上げるレパートリーの選択や録音にも慎重で、

実際に演奏会で取り上げるまでに長い時間をかけ たり、

録音しても発売しなかったり、 LP で発売したものでも CD化を認めない場合もあります 。

 




シ ョパン・コンクールの覇者による待ちに待ったバラード全集    

 

それゆえショパン・コンクール優勝の直後から始まったツィマーマンの録音は、

数こそ少ないものの、その 1 枚 1 枚が極め尽くされた聴きごたえのある名盤揃い。

1980 年には演奏活動を中断して自己の音楽づくりを見つめなおすことで

初期のみずみずしく姿勢のよい演奏を脱し、

一音一音に重み・凄みを湛えた演奏を聴かせるようになりました。

 

 1980 年代半ば以降現在に至るこのツィマーマンの充実の開始を告げたのが、

 1987 年録音のショパンのバ ラード全曲でした。

 ショパン・コンクールのライヴ録音( 1975 年)やポーランドで録音された

リサイタル・アルバム 1977 年)、ワルツ集( 1978 年)、

ジュリーニ指揮ロス・フィルとのピアノ協奏曲 2 曲( 1978 ・ 79 年)など、

ショパン・コ ンクール優勝者ゆえに求められ続々と実現してきた

ショパン録音も見事なものではありましたが、このバラード全曲では、

明敏に磨かれた音と表現に一層の深みを加え、 間然とするところのない

見事なピアニズムを成し遂げて います。

 

ツィマーマンはショパンの音楽を

偏狭なローカリズムから完全に開放し、

20世紀後半のショパン解釈史に 明確な一歩を刻む 名盤を生み出したのです 。




感情の起伏の激しさや深さを実に克明に表出

先ごろ当シリーズでご紹介した 1999年録音の 2曲のピアノ協奏曲で多用された

伸縮自在のテンポやダイナミックスとは異なり、

このバラード全曲(および併録された舟歌と幻想曲)では

よりストレートな表現で作品の核に迫って います。

 

ツィマーマンはバラードについて「ショパンはバラードという形式を、

彼が愛国的な感情の表現のために

マズルカやポロネーズを用いたのと同じように選んだわけではありません。

それにもかかわらず、バラード集には 愛国的な奮闘に満ちた素晴らしい感動があります。

これらの作品においては、愛国心が感情に訴えます 。 」と語っ ていますが、

ツィマーマンの演奏は、ショパンが作品に盛り込んだ

感情の起伏の激しさや深さを実に克明に表出しながらも、

決して感傷に陥らないストイシズムが貫かれています。

 

ショパンがインスピレーションを得たミツキェヴィチの詩の内容も理解しつつも、

具体的な描写性よりも音楽の構造の明晰さを解き明かすことを重視しているかのようです。

実に強靭なタッチ、無尽蔵に変化するニュアンス、類稀な美音・・・

いずれもツィマーマンからでしか聴き 得ない独自の音楽。

ショパン の最高傑作との呼び声も高い舟歌や複雑な構造を持つ幻想曲でも、

同じ視点での緻密な演奏解釈が繰り広げられています 。

 



一音一音に込められた繊細かつ大胆なニュアンス、ダイナミック・レンジの幅広さを堪能    

 

録音は、ドイツ西部の都市ビーレフェルトにある

ルドルフ=エトカー=ハレのグロッサーザール(大ホール)で行われました。

ここは 1928-30年にかけて建設され、ドイツの総合食品メーカーとしては

最大手の「ドクター・エトカ ー」創業者の孫

ルドルフ・アウグスト・エトカー( 1916 2007 )の名を冠し

1930 年 10月にオープン したホール。

 

約3200席の客席は当初から優れた音響で知られ、

第 2次大戦の戦火も免れ、 1955 年に行われた 20人の指揮者による

アンケート調査では世界のベスト 10 に入るとされたほどでした。

録音会場としては 1950年代から時折使用され、

1969 年にはアンタル・ドラティ指揮フィルハーモニア・フン ガリカの

ハイドン:交響曲全集の一部(第49 -72番)の収録(デッカ)が行われました。

ドイツ・グラモフォンは 1980 年代後半に、

ツィマーマンのこのアルバム( 1987 年)を皮切りに、

ミケランジェリのドビュッシー:前奏曲第 2 巻( 1988年)、

ツィマーマンとチョン・キョンファとの R シュ トラウスと

レスピーギのヴァイオリン・ソナタ( 1989 年)、

シューベルトの即興曲集( 1990 年)などの録音に使っています。

このアルバムでのツィマーマンの演奏は、

大きな会場とは思えないほど親密なサウンドで、大き目の音像でくっきりと捉えられ、

ツィマーマン自身の呼気も含め、一音一音に込められた

繊細かつ大胆なニュアンス、ダイナミック・レンジの

幅広さを手に取るように味わうことができます。

優れたデジタル録音であるため、 リマスターされるのは発売以来今回が初めてです。

 

 今回の Super Audio CD ハイブ リッド化に当たっては、

これまで同様、使用するマスターの選定から、

最終的な DSD マスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業をおこないました。

特に DSD マスタリングにあたっては、「 Esoteric Mastering 」を使用。

入念に調 整された ESOTERIC の最高級機材 Master Sound Discrete DAC と

Master Sound Discrete Clock を投入。

また MEXCEL ケ ーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができま した。

 



『冷徹かつ省察的なアプローチで叙事詩的な面に焦点を当てたバラード』    

 

「一人の作曲家を過度に認識する危険を避けたツィマーマンの開かれた音楽との付き合いが、

ここでもショパンに 優れて内省的な演奏を実現させている。

ショパン・コンクール優勝者のレッテルだけで彼のショパン演奏を妄信されることを嫌って、

あえてショパンからは距離を保っていた観のあるツィマーマンだけに、

彼が今この作曲の作品 を選択した意味合い、重みも十分に納得される。

繊細極まりなく、 しかも決して感傷に陥らない彼のここでのショパ ン演奏への賛辞は尽きない。」

(日本初出盤ライナーノーツより 1988 年)

 

「このディスクは彼にとって 9年ぶりのショパンのソロ・アルバムだった。

いかにも力を入れこんだ感じのホットな演 奏が聴ける。

メインの『バラード』全 4 曲については、彼は細部を緻密に仕上げながら、

それぞれの『バラード』のロ マンティシズムや物語に対する解釈を明らかにしている。

そしてスリリングな場面を散りばめたドラマティックな展開によって聴かせどころを作り、

聞き手の感覚に鋭く訴える。」

 (『クラシック不滅の名盤 800 』、 1997 年)

 

「感覚のおもむくままに弾くショパンとは一線を画しているのがツィマーマンだ。

穏やかで、時には冷静で、よく吟 味された美しい音色だけでなく、

音楽の運びも崩さない。一歩間違えれば正統で真っ当で退屈ということになる。

つまり一歩間違えないところにツィマーマンの真骨頂がある。

特に 1987 年に録音されたこのバラード 4 曲は、

正当にして退屈な演奏から離れることほんのわずかだ。

しかしそれだけでなんとファンタジーが生き生きと感じられ 、抒情性に潤いがあり、

劇的な力を持ってしまうことだろう。正道を行くという、今はとても困難なショパンの演奏を、

ツィマーマンはここで見事に歩んでいる。」

(『クラシック名盤大全 器楽曲編』、 1999 年)

 

 「ツィマーマンのこの録音は冷徹かつ省察的なアプローチでもって

バラードの叙事詩的な面に焦点を当てた演奏だ。綿密な全体設計のもと、

細部の表現を徹底的に掘り下げながら、各曲を的確に性格づけている。

決してロ マン的な表情や情熱性に欠けるところはないものの、

感情に溺れることなく、知的な コントロールで彫琢された

思索的な趣を示している点がツィマーマンらしい。

同様なことは『幻想曲』にもいえ、冒頭の意味深長な運びからして

理念的な独自の解釈がうかがえる。

『舟歌』も一つひとつの音に至るまで知的な配慮を行き届かせたアプローチが

クリスタルな詩情を生み出した名演である。」

 (『クラシック最新不滅の名盤 1000 』、 2018 年)

 

  

■収録曲

フレデリック・ショパン

 Fr é d é ric Chopin

 

バラード(全 4 曲)

Four Ballades

 

[1] 第 1 番 ト短調 作品 23

No. 1 in G minor, Op. 23

 

 [2] 第 2 番 ヘ長調 作品 38

No. 2 in F major, Op. 38

 

[3] 第 3 番 変イ長調 作品 47

No. 3 in A flat major, Op. 47

 

[4] 第 4 番 ヘ短調 作品 52

No. 4 in F minor, Op. 52

 

[5] 舟歌 嬰ヘ長調 作品 60

Barcarolle in F sharp major, Op. 60

 

 [6] 幻想曲 ヘ短調 作品 49

Fantasie in F minor, Op. 49

 

クリスティアン・ツィマ−マン(ピアノ)

Kry stian Zimerman, Piano

 

Production: Hanno Rinke

Recording Supervision & Balance Engineer: Helmut Burk

Recorded: 22 26 July 1987, Gro ß er Saal, Rudolf Oetker Halle, Bielefeld

 

 [ 録音 ] 1987 年 7 月 22 日〜 26 日、ビーレフェルト、ルドルフ エトカー ハレ、グロッサーザール

 [ 初出 ] 423 090 2 (1988 年

[ 日本盤初出 ] F32G 20258 (1988 年 10月 25日

 

[オリジナル・レコーディング]

 [エグゼクティヴ・プロデューサー]ハンノ・リンケ

[レコーデイング・プロデューサー、バランス・エンジニア]ヘルムート・バーク

 [ Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰( エソテリック株式会社

[ Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 東野真哉(エソテリック株式会社)

 [ テクニカルマネージャー 加藤徹也(エソテリック株式会社)

[ Super Audio CD リマスター] 2023年 6月 エソテリック・ マスタリング・センター、

「 Esoteric Mastering 」システム

 

[解説] 浅里公三 佐々木節夫

[企画・販売] エソテリック株式会社

 [企画・協力] 東京電化株式会社