SACD ハイブリッド

これぞモーツァルト・オペラ・アリアの理想郷

瑞々しく、気品溢れるルチア・ポップの全盛期を刻んだ名盤 

 
モーツァルト: オペラ・アリア集

ルチア・ポップ(ソプラノ)

レナード・スラットキン 指揮

ミュンヘン放送管弦楽団

価格:4,000円(税込)
ESSW-90278[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

大好評販売中!



■20 世紀後半を代表するモーツァルト歌手ルチア・ポップ

20 世紀はモーツァルト作品の復活の 100 年でもありました。

ごく限られた人気作 品のみが繰り返し取り上げられる状況から、

伝記情報の整理、作品全集の整備・ 出版と普及によって、

モーツァルトの 全体像や多様な作品が大きくクローズアップ され、

それに伴って演奏様式も変化してきました。

 

モーツァルトに相応しい、感情 を込めながらも古典的な規範に則った演奏が主流になり、

特に第 2 次大戦以降は 過剰なロマンティシズムを排した、

よりクリーンな演奏が指向されるようになりました。

オペラや声楽曲における歌唱もその傾向を反映し、

恣意的な表現に流されず歌 のフォルムを明確に保った歌手が台頭してきました。

 

 1963 年にデビューしたルチ ア・ポップ( 1939.11.12 1993.11.16 )は、

文字通りこうした戦後世代を代表するソプ ラ ノ歌手で、

 20 世紀後半のモーツァルトのオペラ上演には欠かせない存在でし た 。

 




コロラトゥーラからリリック・ソプラノへ深化していくポップ    

 

スロヴァキアのブラティスラヴァ近郊に生まれ、

当初はブラティスラヴァ・アカデミーで演劇を学んでいましたが、

モリエールの戯曲「町人貴族」で歌う役で出演した際にその美声が注目され、

本格的に声楽を学び始めました。

 

1963 年、 24歳の時にブラティスラヴァ歌劇場での『魔笛』の「夜の女王」役でデビューを果たし、

同年にウィーン国 立歌劇場と契約し、

それをきっかけに欧米各地の歌劇場やザルツブルク音楽祭をはじめとする各地の音楽祭へ

次々と出演し、『後宮からの誘拐』ブロントヒェン、

『仮面舞踏会』オスカル、『コジ・ファン・トゥッテ』デスピーナ、

『魔弾の射手』エンヒェンなどを歌い、コロラトゥーラ・ソプラノとしてその名声を確立させました。

 

録音面での活躍も鮮烈で、デビューの翌年の 1964 年に、

クレンペラー指揮の『魔笛』全曲盤録音( EMI )に「夜の女王」役で抜擢され、

さらにショルティ指揮で話題を蒔いていた『ニーベルングの指環』全曲の第3弾となった

『神々の黄昏』の録音(デッカ)にもヴォークリンデ役で加わって、

その実力を広くアピールすることになりました。

1960 年代後半からは持ち 前の艶やかで深みと張りのある声、

感情豊かで気品のある表情、多彩な表現力を高め、

リリック・ソプラノ役にシフ トしてさらにその本領を発揮し、

『フィガロの結婚』スザンナ、『ドン・ジョヴァンニ』ツェルリーナ、『ばらの騎士』ゾフィ ー、

『アラベラ』ズデンカ、『リゴレット』ジルダなどの当たり役を続々と手がけていきます。

その中でもモーツァルト のオペラは常にポップのレパートリーの中心的な位置にあり、

 1970年代には同じ『魔笛』でも夜の女王ではなくパミーナを、

『後宮からの誘拐』でもブロントヒェンではなくコンスタンツェを手掛けるようになっています 。




モーツァルト歌手ルチア・ポップの精髄を刻んだ 1 枚

さらにポップは 1980 年代に入ると、さらにその声や表現力を成熟させ、

陰影の濃い多感な表現を聴かせるようになり、

『こうもり』ではロザリンデ、『ばらの騎士』では侯爵夫人、

『アラベラ』では題名役を歌うようになり、

きめ細やかなディクションはシューベルトから

ベルクに至るリートの分野でも高い評価を獲得していきます。

 

1983 年に録音された 当アルバムは、まさにそうした時期の、

60 年 代〜 70 年代を通じて高めてきた表現力の巧みさと

気品あふれる声の魅力が存分に盛り込まれ、文字通り全盛期にあった

ポッ プの魅力を堪能させてくれる 1 枚で、

初期の『羊飼いの王様』から『 皇帝ティトゥスの慈悲』までの

 7 曲のオペラから 10 曲のアリアが収められています。

このアルバムで興味 深いのは、ポップが当時当たり役としていた

スザンナやコンスタンツェ、イリア、ヴィテリアのアリアでベスト・フォーム の演奏が聴けるだけでなく、

ケルビーノ、ドンナ・アンナ、 ドンナ・エルヴィーラといった

ポップが実際の舞台では歌わなかった役柄のアリアが含まれていることでしょう。

 

また 『フィガロの結婚』の伯爵夫人は、

1980 年代半ばからポッ プが歌い始める役で、

その先ぶれともいえるこの録音でも 表現力の著しい深化を味わうことができます。

ポップによるモーツァルトのアリア集はコンサート・アリア集から抜粋したものや

全曲盤からコンピレーションしたものもありますが、

彼女はこのアリア集を録音してからちょうど 10 年後の 1993 年に脳腫瘍で

54 歳という若さで亡くなったため、

オリジナルのアリア集はこの 83 年録音盤のみが残されることになりました。

その意味でもこの 20 世紀に輝かしい 足跡を残したモーツァルト歌手ポップの

エッセンスが盛り込まれた実に貴重なアルバムといえるでしょう 。



実に伸びやかに、艶っぽく響くポップの美声    

 

録音はミュンヘンのバイエルン放送局の録音スタジオ 1で行われました。

1963 年、ミュンヘン中央駅のそばにあるバイエルン放送局内に設けられたこのスタジオは、

同放送局内にある 3つのスタジオのうち最大のもので、

3管編成のオーケストラや独唱・合唱を伴う歌劇・声楽曲の録音も可能な箱型の空間。

バイエルン放送に所属するミュ ンヘン放送管弦楽団の録音制作はもっぱらここで行われていました

( 300名弱の客席を設けるとコンサート会場としても使用可能で、

客を入れての公開放送・録音も頻繁に開催されています)。

スタジオであるにもかかわらず、

空間の容積が大きいこともあって豊かな残響があることでも知られ、

このアルバムでもポップの美声が実に伸びやかに、艶っぽく響くさまが捉えられています。

ドイツ EMI エレクトローラとバイエルン放送の共同制作で、

そのため プロデューサーの一人テオドール・ホルツィンガーと

エンジニアのハンス・シュミットはバイエルン放送のスタッフが担っています。

もう一人のプロデューサー、ゲルト・ベルクとディレクターのクリストフリード ・ビッケンバッハは

ドイツEMI エレクトローラのスタッフで、特にベルクは

1960 年代から 1990 年代にかけてさまざまなクラシック録音をプロデュースした名プロデューサーでした。

 

発売以来今回が初めての Super Audio CD ハイブリッド化となります。

 Super Audio CD ハイブリッド化に当たっては、

これまで同様、使用するマスターの選定から、最終的な DSD マスタ リングの行程に至るまで、

妥協を排した作業をおこないました。特に DSD マスタリングにあたっては、

「 Esoteric Mastering 」を使用。 入念に調整された ESOTERIC の最高級機材

Master Sound Discrete DAC と Master Sound Discrete Clock を投入。

また MEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報 を伸びやかなサウンドでディスク化することができました。

 



『 20 年にわたるポップのモーツァルト歌手としての歩みと蓄積の集大成』    

 

「 1963 年、ウィーン国立オペラで初めて夜の女王を歌って

センセーショナルなデビューを飾って以来、この 20 年 の間に、

ポップのモーツァルト・レパートリーは次第に広がり、

コロラトゥーラからリリコ・スピントのキャラクターへと 移ってきた。

かつての夜の女王は、今ではパミーナを歌い、

デスピーナはフィオルディリージへと成長している。

だがポップの才知あふれるチャーミングな歌唱は、いまなお依然として変わらない。

この久しぶりのアリア集は、こうした 20 年にわたるポップのモーツァルト歌手としての歩みと

蓄積の集大成とも言うべきレコードであり、

初期の 『羊飼いの 王様 』から最晩年の『ティトゥス』まで、

代表的 なオペラのレパートリーを網羅しているばかりでなく、

『フィ ガロ』ではケルビーノ、スザンナ、伯爵夫人の 3 つの役を歌い分けているのが大変興味深い。

選曲・内容ともに、 ルチア・ポップにして初めて可能な、

充実したリサイタル盤といってよいだろう。」

(日本初出盤ライナーノーツより 1984 年)

 

「ポップの 20 年にわたるモーツァルト演奏の精髄を集めたアルバム。

その歌唱はどんな場合にも知的な清潔さと細かな神経の行き届いた周到な表現でありながら、

少しもメカニカルな冷たさに走ることがなく、何よりもあたたかな人間的な命を感じさせる。

その解釈とともにポップが現在世界で最も好ましいモーツァルト歌手の一人であることを、

ここで見事に証明している。」

 (『レコード芸術』 1984 年 4 月号、特選盤)

 

 

  

■収録曲

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

Wolfgang Amadeus Mozart

 

オペラ・アリア集

 Opera Arias

歌劇《羊飼いの王様》 Il r è pastore KV 208 から

[1] 彼女を愛そう、生涯変わらずに(第 2 幕、アミンタ)

 L'amer ò , sar ò costante (Aminta, 2.Akt)

 

歌劇《フィガロの結婚》 Le nozze di Figaro KV 492 から

 [2] 恋とはどんなものかしら(第 2 幕、ケルビーノ)

Voi, che sapete (Cherubino, 2.Akt)

[3] とうとう嬉しい時が来た―早くおいで、美しい喜びよ(第 4 幕、スザンナ)

Giunse alfin il momento Deh vieni, non tardar (Susanna, 4.Akt)

[4] 愛の神よ照覧あれ(第 2 幕、伯爵夫人)

Porgi amor (Contessa, 2.Akt)

 

歌劇《後宮からの逃走》 Die Entf ü hrung aus dem Serail KV 384 から

 [5] 深い悲しみに―悲しみは私の運命となる(第 2 幕、コンスタンツェ)

Welcher Kummer Traurigkeit ward mir zum Lose (Konstanze, 2.Akt)

 

歌劇《イドメネオ》 Idomeneo KV 366 から

 [6] 慣れ親しんだ孤独よ―そよ吹く風(第 3 幕、イリア)

Solit udini amiche Zeffiretti lusinghieri (Ilia, 3.Akt)

 

歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 Don Giovanni KV 527 から

[7] 何というふしだらな―あの恩知らずは約束を破って(第 2 幕、ドンナ・エルヴィーラ)

 In quali eccessi Mi tradi quell'alma ingrata (Donna Elvira, 2.Akt)

[8] いいえ違います―わたしはあなたのもの(第 2 幕、ドンナ・アンナ)

Crudele? Non mi di r bell'idol mio (Donna Anna, 2.Akt)

 

歌劇《コジ・ファン・トゥッテ》 Cos ì fan tutte KV 588 から

 [9] 岩のように動かずに(第 1 幕、フィオルディリージ)

Come scoglio (Fiordiligi, 1.Akt)

 

歌劇《皇帝ティトゥスの慈悲》 La clemenza di Tito KV 621 から

[10] もはや花も(第 2 幕、ヴィテリア)

 Non pi ù di fiori vaghe catene (Vitellia, 2.Akt)

 

ルチア・ポップ(ソプラノ)

 Lucia Popp, Soprano

ミュンヘン放送管弦楽団

Munich Radio Orchestra

指揮 : レナード・スラットキン

Conducted by Leonard Slatkin

 

[録音] 1983 年 6 月 15 -19 日、

ミュンヘン、バイエルン放送局スタジオ バイエルン放送局との共同制作

 [初出] [LP] 1C 067 1467871 [CD] CDC 740192 (1984 年

 [日本盤初出][ LP ] EAC 90200 (1984 年 2 月 21 日 CC38 3 110 (1984 年 4 月 21 日

 

 [オリジナル・レコーディング]

 [レコーデイング・プロデューサー]テオドール・ホルツィンガー、ゲルト・ベルク

[レコーディング・ディレクター]クリストフリード・ビッケンバッハ

[バランス・エンジニア]ハンス・シュミット

 [ Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰( エソテリック株式会社

[ Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 東野真哉(エソテリック株式会社)

[ テクニカルマネージャー 加藤徹也(エソテリック株式会社)

 [ Super Audio CD リマスター] 202 3 年 3 月 エソテリック・ マスタリング・センター、

 「 Esoteric Mastering 」システム

[解説] 浅里公三 崎保男

[企画・販売] エソテリック株式会社

[企画・協力] 東京電化株式会社