SACD ハイブリッド

20 世紀ピアノ演奏の規範となった

アシュケナージのラフマニノフ ピアノ協奏曲全集。 

 
J ・ S ・バッハ

無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ

ナタン・ミルシテイン(ヴァイオリン)

価格:8,000円(税込)
ESSG-90276/7[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

大好評販売中!



■20世紀ロシア楽派のヴァイオリンの潮流を体現

「演奏の世紀」といわれた 20世紀の演奏史の中でも

極めて個性的な輝きを放ったヴァイオリニストの

ナタン・ミルシテイン( 旧暦 1903.12.31 1992.12.21 )。

 

ヤッシャ・ハイフェッツやダヴィッド・オイスト ラフらと並び、

20 世紀 ロシア楽派のヴァイオリンの潮流を体現した名手でした。

現ウクライナのオデーサに生まれ、 7 歳からピョートル・ストリ ャルスキーに、

12 歳からは サンクト ペテルブルク音楽院 でレオポルト・ アウアーに学び、

アウアーのロシアでの最後の弟子となりました。

デビ ュー・リサイタルは 1920 年、 16 歳の時で、

 1925 年にはパリとベルリンでデビューを果たし、それを機にヨーロッパに移住し、

 1929 年にはレ オポルド・ストコフスキー指揮フィラデルフィア管弦楽団との共演で

グ ラズノフのヴァイオリン協奏曲を弾いてアメリカ・デビューを飾り大成功を収めました。

以後アメリカを中心に世界的な演奏活動を開始し、

1942 年にはアメリカ国籍を取得、ミルシテインの存在は、

アメリカ音楽界に欠かせないものとなりました。

第2次大戦後はヨーロッパに戻りロ ンドンを拠点に演奏活動を継続し、

1960 年にはカーネギーホールで 初めて演奏してから

 30年を記念するリサイタルを開催しています。

ミルシテインは70歳を超えても技巧の衰えを見せず、

ニューヨークのジュリアード音楽院やスイスでマスタークラス を開催、

若手の指導にも力を入れています。

1986年、 83 歳の時にストックホルムで行ったリサイタルまで現役を貫きました 。

 




生涯最後のセッション録音となったドイツ・グラモフォンへの名盤    

 

ミルシテインは長い活動歴の割には残された録音量は少ないのが特徴で、

録音歴は 78 回転( SP レコード)の時 代だった

1930 年代の米コロンビアへの録音にはじまります。

モノラル時代には RCAにも録音しているものの、

デ ィスコグラフィの上でミルシテインの名を世界的にしたのは

1955 年に開始された米キャピトルへの録音でした。

 

 1962 年のステレオ時代まで続くキャピトルへの録音では協奏曲、

ソナタ、技巧的な小品とミルシテインの主要なレパートリーが録音されています。

そしてほぼ 10 年間録音活動から遠ざかった後、 1972 年にドイツ・グラモフォンと 契約を結び、

アバドウィーン・フィルというこれまでのミルシテインの録音歴から考えると

意外な組み合わせによる メンデルスゾーンとチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を皮切りに、

バッハの無伴奏全曲、ヨッフム ウィーン・フ ィルとのブラームスのヴァイオリン協奏曲、

そして自作の「パガニーニアーナ」を含む小品集にいたるまで、

1975 年 までに LP5 枚分の録音を行っています( 1973 年から 1985 年にかけて発売)。

これら はミルシテインにとって生涯最後のセッション録音となったもので、

その最円熟期の冴えた技巧と優れた知性的解釈を刻み込んだ歴史的な名盤といえましょう 。




ミルシテインの中心的なレパートリー

バッハの無伴奏ソナタとパルティータ全曲はミルシテインの中心的なレパートリーでした。

12歳のミルシテインが 初めてアウアーの前で弾いたときに取り上げたのがパルティータ第1番で、

アウアーに師事するきっかけ の 作品と なりました。

ミルシテインが幼年期を過ごした当時のロシアではバッハの無伴奏は重要視されず、

アウアー自身も 「タイスの瞑想曲」 やドヴォルザーク「ユモレスク」のような作品を

バッハよりも高く評価していたそうですが、

ミルシテインは自分の審美眼を信じバッハに取り組みました。

リサイタルには必ず 1 曲(もしくは楽章)を取り入れ、

協奏曲のアンコールでも取り上げました(ライプツィヒでゲヴァントハウス管と共演したとき、

ソナタ第 1 番全曲をアンコールしたという逸話も残っています)。

ミルシテインの熱心な取り組みは功を奏し、

作品の重要性が広く認識され、

あらゆるヴァイオリニストにとって欠かすことのできないレパートリーとなったのです 。

 



2 度目の無伴奏    

 

ミルシ テインは生涯に 2度バッハの無伴奏全曲を録音しており、

今回 Super Audio CD ハイブリッド化された ドイ ツ・グラモフォンへの録音は、

 1955 56 年のキャピトルへのモノラル録音からほぼ 20 年後の再録音となったものです。

この再録音についてミルシテイン自身、

「 1950 年代に私が録音したもの(註:キャピトル盤のこと)よりも明らかに優れていると思う。

昔よりよく弾けるようになっていない作品は私のレパートリーにはない。

単に以前よりも経験を積み重ねているからだ。現在の優れた録音技術で、

これらのレパートリーを再録音できるのは特にうれしいことだ 。 」と語っているほどの自信作でした。

繰り返しを省いた一気呵成の気迫はキャピトル盤に優位があるものの、

張り詰めた緊張感、集中力の高さ、音色やニュアンスの豊かさは再録音に軍配が上がります。

シェリング、グリュミ オー、メニューイン、スークなどの

アナログ・ステレオ時代のバッハ無伴奏録音の中でも、

最も気品に満ちた解釈と もいえるでしょう。

使用楽器はミルシテインが 1945 年に入手した 1716 年製のストラディヴァリウスで、

「ゴールドマ ン」と称されていたもので、

ミルシテインは娘のマリアと妻のテレサに敬意を表して「マリア・テレサ」と改名しています。

 



作品に相応しいバッハの音楽しか感じさせないストイックな音作り    

 

録音はロンドンのコンウェイ・ホールで行われました。

ロイヤル・オペラや大英博物館も近いロンドンの中心地レッド・ライオン・スクエアに位置するホールで、

もともと1929年に英国の倫理協会によって集会場として建立されました。

現在では、英国最古のクラシック音楽の演奏シリーズを含む

さまざまなジャンルのコンサートが開催され、映画撮影に使われることも多いようです。

 

メインフロアとバルコニー合わせてもキャパシティは 400と小ぶりなサイズで、

稼働率が高いためあまりクラシック音楽の録音には使われないものの、

有名なアルバムでは 1970 年に録音されたユーディ・メニューインと

ヴィルヘルム・ケンプによるベートーヴェンの

ヴァイオリン・ソナタ全集(ドイツ・グラモ フォン)があります。

 

ドイツ・グラモフォンの録音台帳によると、

ミルシテインの無伴奏の録音はここを会場にして、

 1973 年 2 月 10 日〜 14 日および 9 月 7 日〜 11 日、

そして翌 1974 年 4 月 17 日〜 18 日と、ほぼ毎日約 3 時間の ワンセッションというペースで、

約 1 年 2 か月のスパンの中で 3 つのブロックに分かれたセッションで

14 日間をかけてじっくりと収録されました(この間、 1973 年 4 月 24 日と 25 日には

ウェンブリ ーにあるブレント・タウン・ホールで もセッションが行われています。

また ドイツ・グラモフォンの LP 表記では 1974 年のものは使われなかったことにな っています )。

 

適度な響きと暖かみのあるアコースティックの中で、

ミ ルシテインの独奏が極めて明晰に捉えられています。

音の抜けもよく、ミルシテインの紡ぎ出す音色の美しさ、

楽器の質感も余すところなく再現され、

文字通り バッハの音楽だけに浸ることのできる音作りがなされています。

名盤ゆえに CD 初期の 1988 年には CD 化されており、

それ以来カタログから消えたことがないアルバムで、

1998 年には OIBP Original Image Bit Processing )でリマスターされ、

さらに 2017 年にはタワーレコードによって Super Audio CD ハイブリッド 盤が発売されており、

今回 が 2 度目の Super Audio CD ハイブリッド 化となります。

 

今回の Super Audio CD ハイブリッド化に当たっては、

これまで同様、使用するマスターの選定から、

最終的な DSD マスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作 業をおこないました。

特に DSD マスタリングにあたっては、 「 Esoteric Mastering 」を使用。

入念に調整された ESOTERIC の 最高級機材 Master Sound Discrete DAC と

Master Sound Discrete Clock を投入。

また MEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドでディスク化することができまし た。

 

 

 


『決して多いとは言えないミルシテインのレコードの中では屈指の名盤の一つ』    

 

「ミルシテインのバッハには、少しも学究的な堅苦しさはない。

それは理知的に抑制されてはいるが、かつての彼 のどの演奏に比べても内的緊張感が強く、

アリストクラティックな洗練が、冷たさよりも心のゆとりと結びついている。 (……)

彼のバッハは、ミルシテインの全人的な自己主張というべきものである。

この演奏には音楽の何たるかを知 った自然なニュアンスが立ち込め、

そのすべてがミルシテインのものと感じられる。

彼はバッハ音楽とは何かを追求した結果、ついにそれが自分の芸術の始めであり

終わりであることを知ったのではないだろうか。

ミルシテイン は 一人我が道を行くことによって、

ここに揺るぎのない主張を普遍的なものにまで高めた。

それは『私が音楽について考える時、私はバッハを思う』という

彼自身のことばの実践と言わなければならない。」

(日本初出盤ライナーノーツより 1976 年)

 

「決して多いとは言えないミルシ テインのレコードの中では屈指の名盤の一つ。

格段に良好な音質のお陰 で、つ いに日本の愛好家の前に姿を現すことのなかった

この大家の固有の美質が一段と明瞭にとらえられているように思う。

絹のような音色の美しさ、高雅な音楽性は全く類を見ないものだが、

とりわけこ こでは、彼のノーブルな語り 口が

バッハの音楽の気高さを浮き彫りにしているのがすばらしい。」

(『レコード芸術別冊・クラシック・レコードブック VOL.5 器楽曲』、 1985 年)

 

「ミルシテインの代表的な名盤の一つ。

収録当時 70 歳という高齢に達していたにもかかわらず、

技巧の衰えが全く感じられないのは驚くべきことだ。

作品に相応しい緊張感を維持しながら、虚飾を排した、

瑞々しく高雅な音楽 によって聞き手に語りかけてくる。

音色面でもよく考え抜かれ、しかもそれが作り物でなく

真の音楽表現と結びつ いているところがミルシテインならではといえるだろう。

そして、なにより印象的なのがバッハの音楽にひたすら奉仕するような姿勢である。

昨今、腕の立つ器用なヴァイオリニストは多くなったけれど、

彼のように厳しい姿勢で音楽に臨む人は逆に少なくなったように思われる。」

 (『クラシック名盤大全・器楽曲編』、 1999 年)

 

「晩年になってもほとんど衰えなかった快刀乱麻を断つような見事な技巧。

余計な情緒表現を差し挟まず、切れ 味鋭く核心に切り込んでいく思い切りの良さ。

と言って決して乾いた表現ではなく、その音楽や音色に独特の情感をたたえた懐の深い表現は、

このバッハの無伴奏ヴァイオリンのための作品で最高度に発揮されている。

この 作品の一つの規範となる傑作であるといっても過言ではない。」

(『クラシック最新不滅の名盤 1000 』、 2018 年)

 

 

 

  

■収録曲

ヨハン・セバスティアン・バッハ

Johann Sebastian Bach

無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ BWV1001-1006

Sonatas and Partitas for Solo Violin, BWV 1001- 1006

 

DISC 1

ソナタ 第 1 番 ト短調 BWV1001

Sonata No. 1 in G minor, BWV 1001

 [1] Adagio

 [2] Fuga (Allegro)

[3] Siciliana

[4] Presto

 

パルティータ 第 1 番 ロ短調 BWV1002

 Partita No. 1 in B minor, BWV 1002

[5] Allemanda

[6] Double

[7] Corrente

 [8] Double (Presto)

[9] Sarabande

 [10] Double

[11] Tempo di Borea

[12] Double

 

ソナタ 第 2 番 イ短調 BWV1003

 Sonata No. 2 in A minor, BWV 1003

[13] Grave

 [14] Fuga

 [15] Andante

 [16] Allegro

 

DISC 2

パルティータ 第 2 番 ニ短調 BWV1004

Partita No. 2 in D minor, BWV 1004

[1] Allemanda

[2] Corrente

 [3] Sarabanda

 [4] Giga

[5] Ciaccona

 

 ソナタ 第 3 番 ハ長調 BWV1005

Sonata No. 3 in C major, BWV 1005

 [6] Adagio

[7] Fuga

[8] Largo

 [9] Allegro assai

 

パルティ ータ 第 3 番 ホ長調 BWV1006

Partita No. 3 in E major, BWV 1006

 [10] Preludio

[11] Loure

 [12] Gavotte en Rondeau

[13] Menuet I

 [14] Menuet II

[15] Bourr é e

[16] Gigue

 

ナタン・ミルシテイン(ヴァイオリン)

 Nathan Milstein, Violin

 

[録音] 1973 年 2 月、 4 月、 9 月 、

ロンドン、コンウェイ・ホール(ウェンブリー、ブレント・タウン・ホール)

[初出] 2709 047 ( 1975 年

[日本盤初出] MG 8146 8 (1976 年 4 月 1 日

 

[オリジナル・レコーディング]

[レコーディング・プロデューサー]ヴェルナー・マイヤー

 [トンマイスター(バランス・エンジニア)]クラウス・ヒーマン

[レコーディング・エンジニア]ヨアヒム・ニス、フォルカー・マルティン

 [ Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰( エソテリック株式会社

[ Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 東野真哉(エソテリック株式会社)

 [ テクニカルマネージャー 加藤徹也(エソテリック株式会社)

[ Super Audi o CD リマスター] 202 3 年 3 月 エソテリック・ マスタリング・センター、

 「 Esoteric Mastering 」システム

 [解説] 浅里公三 寺西基之

 [企画・販売] エソテリック株式会社

 [企画・協力] 東京電化株式会社