SACD ハイブリッド

名指揮者プレヴィンの新たなチャプターを開示した

ウィーン・フィルとの美演 2曲を1枚にカップリング。 

 
R= コルサコフ:交響組曲《シェエラザード》

ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

 アンドレ・プレヴィン指揮

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

価格:4,000円(税込)
ESSD-90259[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

大好評、販売中!



■偉大なマルチ・ミュージシャン、アンドレ・プレヴィン  

 

 「私は、作曲家だけ、指揮者だけ、あるいはピアニストだけという人生には抵抗を感じると思う。

しかし、音楽家であることが誇りであり、そして幸せだ。この世で最高の職業であり、

そうであれることに格別感謝している」と自ら語るように、指揮者、ピアニスト、作曲家と多彩な顔を持ち、

アカデミー賞を 4回、グラミー賞を10 回受賞するなど、 20世紀が 生み出した最も多彩かつ偉大な音楽家、

サー・アンドレ・プレヴィン(1929ー2019 )。

 

ベルリ ンに生まれ、大戦勃発前にロサンジェルスに移住したプレヴィンは、

高校生の頃からサイレント映画の伴奏や MGM でのオーケストレーターの仕事を始め、

その早熟の才能を一気に開花させます。

第 2 次大戦後は、マルチ・ミュージシャンとしての活動を本格化させ、

 2019 年に亡くなるまで緩むことなく音楽家として歩み続けました。

 




CDの隆盛と期を一つにしたプレヴィンのフィリップス録音    

 

ピエール・モントゥーに指揮を学んだプレヴィンがクラシック指揮者としてのデビューを果たすのは、

1962 年にセ ントルイス交響楽団の指揮台に立った時のこと。

その後ロンドン交響楽団、ロイヤル・フィル、ロサンジェルス・フィ ル、ピッツバーグ交響楽団、

NHK交響楽団などの名だたるオーケストラの常任を歴任したプレヴィンですが、

レコ ーディングにも積極的で、指揮者としてのものに限っても、

コロンビア、RCA、EMI、テラーク、ドイツ・グラモフォンなど、

ワールドワイドのネットワークを持つほぼすべてのメジャー・レーベルに多数の名盤を残しています。

 

その中で日本において多くの新たなプレヴィン・ファンを生み出したのが、

1980 年に始まるオランダ・フィリップスへの 録音でした。

折しもC D デジタル録音の黎明期に当たり、新しい録音技術で収録したソフトが渇望されていたことから、

プレヴィンもピッツバーグ響、ロサンジェルス・フィル、そしてウィーン・フィルという 3 つのオーケストラを振って、

多彩な演目のアルバムが続々と発売されることになったのです。




誰もが意外だったプレヴィンとウィーン・フィルの蜜月

中でも指揮者のチョイスに関して最も厳しいとされたウィーン・フィルとの組み合わせは、

ロンドン響時代に特に 若い聴衆に対して絶大な人気を誇る指揮者というそれまでの

プレヴィンのイメージからは意外なものでした 。

 

プレヴィンがウィーン・フィルに始めて客演したのは 1978年 1月、ザルツブルク・モーツァルト週間でのこと。

オール・ モーツァルト・ プログラム という重要な試金石を通過し、

ウィーン・フィルとの相性の良さを証明したプレヴィンは、

同フィルにとっても最も重要な定期演奏会に招かれる常連となり、海外ツアーも任されるなど、

2003 年 9月まで 25年間に 90 回共演しています。

 

同フィルとの初レコーディングは 1980 年に当時プレヴィンと

密接な関係にあったEMI で実現(R.シュトラウスの三大交響詩)し、

以後 2003 年まで継続され、 カラヤンやベーム、バーンスタインの次の 世代の指揮者を探していた同フィルと、

50 歳を越えていよいよ円熟の境地へと脱皮しようとしていた壮年期のプレヴィンは相思相愛の関係となり、

その共演がレコーディングとして発売されることで、プレヴィンが今やヨーロッパ 本流の巨匠的存在なのだ、

という事実が世界的にクローズアップされることになったのです。

 

オーケストラを強引 にドライブするのではなく、

その特質を自然な形で生かして演奏に資するプレヴィンの姿勢が、

ウィーン・フィルと 見事なまでの科学反応を起こし、その個性を引き出した名演を実現させたわけです。

 

 



名曲なれどウィーン・フィルには珍しいレパートリーで成功した「シェエラザード」    

 

2 「シェエラザード」は、 1980 年 12月、 1980/81年シーズンのウィーン・フィル第4回定期とリンツでの

 3回のコン サートの合間にムジークフェラインザールで持たれた 2日間のセッションで収録されました。

興味深いのは、この 時ウィーン・フィルにとって、シェエラザードを演奏会で取り上げたのが、

1946 年(ポール・パレー指揮)以来 34 年 ぶりだったことでしょう。

 

ウィーン・フィルのようなメジャー・オケがこのような有名曲を演奏会で 30 年以上も取り上げなかったのは珍しく、

レコーディングも初めてでした(プレヴィン以降、小澤征爾とも録音)。

ロシア系の指揮者やオーケストラが演奏すると金管を豪壮に鳴らした

威圧的なイメージになりがちな(そしてそれが似合う)作品ですが、

プレヴィン ウィーン・フィル盤では、オーケストラの匂い立つような美感を最大限に生かした、

洗練・優美の極みと もいえるサウンドが生み出されています。

 

全体は極端な緩急をつけず中庸のテンポでじっくりと運ばれ、

各楽章で音楽を導入するコンサートマスターのライナー・キュッヒルの緻密かつ繊細なヴァイオリン・ソロ、

そして随所に登場する木管やホルンのソロの薫り高い音色

(木管パートの 4 人の首席は名前がクレジットされているほど)も大変な聴きものです。

細部の説明的な情景描写よりも純粋な音としての充実度を優先させ、感情の起伏も抑制されていますが、

クライマックスでは余裕のある内燃するような迫力が存分に伝わってきます。

 




■あくまでも 音楽的な「展覧会の絵」    

 

5 年後の「展覧会の絵」は、 1985年 4月のシーズン第9回定期の 2 回の演奏会での

拍手入りライヴ・レコーディ ング(この時の演奏会では「展覧会の絵」は演奏会の前半に取り上げられ、

後半にはドビュッシー「夜想曲」とラヴェル「ラ・ヴァルス」が置かれるというフランス音楽プログラムでした)。

 

「展覧会の絵」も、「シェエラザード」ほどではないにしろ、

どちらかというとウィーン・フィルにとってはレアなレパートリーで、

このプレヴィン盤が同曲初録音とな りました(プレヴィン以降、ゲルギエフ、ドゥダメルとの録音あり)。

演奏の特質は「シェエラザード」と同じで、オーケストラの個性的かつ美しいソノリティを最大限に生かして、

作品そのものに語らせることを主眼に置いた自然さを持っています。

冒頭の ほか、何度も回帰する「プロムナード」での音色やハーモニーのデリケートな変化の妙が見事に描き出され、

随所で活躍する木管のソロの巧みさもウィーン・フィルならでは。

「こびと」や「ブイドロ」でも不気味 さよりもラヴェルが加えたオーケストレーションの色彩感の魅力が際立っています。

「キエフの大門」のクライマック スでも全く力んでいないのに光彩陸離たる頂点が築かれています。

 



■フィリップスによる最初期のウィーン・フィル録音    

 

これら 2 曲の録音はまた、フィリップスによる最初期のウィーン・フィル録音でもありました。

フィリップス がウィー ン・フィルを初めて録音したのは

 1980 年 3月のハイティンク指揮によるブラームス「ドイツ・レクイエム」であり、

それに続いたのがプレヴィンの「シェエラザード」でした

(当初フィリップス・レーベルで発売された 1980年 5月のカラヤ ン指揮による「ファルスタッフ」はDGスタッフによる収録)。

 

収録会場のムジークフェラインザールは無人の場合残響成分が多く、レコーディングが難しい会場として知られていますが、

フィリップス(初出盤にはスタッフ・クレジット はなし)ならではの

熟練のマルチ・マイク・テクニックと編集過程での巧みなミキシングにより、

オーケストラの各パートの細かな動きを克明に記録しながら、

同時にムジークフェライン全体に鳴り響くウィーン・フィルのサウンド・イメ ージを理想的な形で再現しており、

この 2 曲のようなオーケストレーションの精細な作品にピッタリの音作りがされています。

「展覧会の絵」はライヴですが、それによるハンディもほとんど感じさせず、

セッション収録の「シェエラ ザード」と同傾向のサウンドに仕上げられています。

デジタル初期の名録音として知られていたため、 2 曲とも今回が発売以来 、

初めての本格的 なリマスターとなります。

 

これまで同様、使用するマスター の選定から、最終的な DSDマスタリングの行程に至るまで、

妥協を排した作業 をおこないまし た。 特に DSD マスタリングにあたっては、

新たに構築した 「 Esoteric Mastering 」を使用。

入念に調整された ESOTERIC の最高級機材 Master Sound Discrete DAC と Master Sound Discrete Cloc k を投入。

また MEXCEL ケーブルを惜 しげもなく使用することで、

オリジナル・ マスターの持つ情報を伸びやかなサウンドで ディスク化することができまし た。

 




■『陶酔的な魅惑さで描き出される〈アラビアン・ナイト〉の世界』(シェエラザード)

『スコアに書かれた音楽を純度高く演奏』(展覧会の絵)    

 

◎シェエラザード

 「ウィーン・フィルによる《シェエラザード》は珍しい。演奏は全体にテンポを遅めにとり、

ロシア的情緒を濃厚に表 出したものである。もともとプレヴィンはロシアものがうまいが、

これも彼のこうした自己主張をよく表している。それ とこの曲の交響的構成とは別に、

どちらかといえば表題音楽的要素を重視して、アラビアン・ナイトの世界を音に よって見事に表現している。

ウィーン ・フィルも妖艶な美しさを出している。」

 (『レコード芸術』、 1982 年 12 月号、推薦盤)

 

 「やや遅めのテンポで、冷静に端正に運ばれていく演奏で、卑俗さや粗野さとは無縁のものだ。

そしていかにもウ ィーン・フィルだと感嘆させずにはおかないような、各楽器のソフトで甘美でつややかな音質と音色、

つまりはオー ケストラの響きが、〈アラビアン・ナイト〉の世界を陶酔的とでも言いたいような魅惑さで描き上げている。

また終楽章 では、きわめてドラマティックで輝かしいクライマックスを形成して、聴く者を昂奮の渦に巻きこまずにはおかない。

キュッヒルのソロの官能的な美しさも聴き落とせないものだ。」

 (『クラシック・レコードブック VOL.2 管弦楽曲編』、 1985 年)

 

 「プレヴィンはどんなオーケストラを指揮しても独自のゴージャスな響きを引き出す能力を持っている人だ。

でも、 そうした彼の持ち味とぴったり合致して最大限の効果をあげるのはウィ−ン・フィルではなかろうか。

このディスク はそうした彼らの共同作業の最良の成果の一つ。《シェエラザード》にはさまざまな料理法があり、

腕に自信のある 指揮者ならばつい演出を試みたくなるもの。でもプレヴィンは抜群の色彩感と 鋭敏な劇的感覚を頼りに、

余計な 細工を施すことなく作品の持ち味を素直に引き出している。その結果、細やかな表情を宿した弱音から、

凛然たる ダイナミックな表現まで、オーケストラを聴く醍醐味を堪能させてくれる名演が誕生した。」

 (『クラシック名盤大全・管弦楽曲編』、 1998 年)

 

「ウィーン・フィルは《シェエラザード》を 2 回しか録音しておらず、

現時点で録音が残っているのは 1981 年に録音 されたこのプレヴィン盤と 93 年の小澤盤のみである。

《シェエラザード》のような色彩感あふれる管弦楽作品はまさ にプレヴィンの独壇場である 。

ドラマティックな楽曲がオムニバスの形で並ぶこの曲は、場面の描き分けと自然な 流れを両立させるのが難しいのだが、

バレエの全曲録音でもその腕が光るプレヴィンは、オーケストラの美質を生 かしながら面白く聴かせている。」

 (『最新版・クラシック不滅の名盤』、 2018 年)

 

 

 ◎展覧会の絵

 「『プレヴィンがウィーン・フィルとの演奏会でラヴェルのスコアを再現している』ということが、

このディスクの一つの セールス・ポイントになっている。しかも、ここにはライヴにありがちな演奏上の問題がほとんどない。

プレヴィンの スタイルは。どちらかといえばオーソドックスで、不要な演出はどこにも見られない。

ここでは、伝統あるオーケスト ラの中に潜む近代的なフレキシビリティの存在を意識させる。」

(『レコード芸術』、 1986 年 8 月号、推薦盤)

 

「この作品は、むろん標題的な要素をはっきりと持った作品なのだが、

プレヴィンはとりあえずそうした音楽外のことにこだわらず、

スコアに書かれた音楽を純度高く演奏することだけに没頭する。

そうした方法が、ウィーン・フィル という自発性と室内楽精神に富んだオー ケストラから、演奏者同士、

そして演奏者から指揮者への共感と協調の 満ちた気持ちのいい音楽を紡ぎ出す。

個々の楽器の音色美、そして合奏時の全体の美しさはウィーン・フィルな らでは。

こうした本質的には絶対音楽志向のアプローチながら、演奏者たちを、

そしてなによりも作品そのものを強引に引っ張りまわさない プレヴィンの柔軟な音楽作りから、

自然な標題的起伏が浮かび上がる。 」

(『クラシック名盤大全・管弦楽曲編』、 1998 年)

 


 

■収録曲

ニコライ・リムスキー コルサコフ Nikolai Rimsky Korsakov

《 シェエラザード》 作品 35

» Scheherazade « , Op. 35

『千夜一夜物語( アラビアン・ナイト )』による交響組曲 Symphonic suite after "A Thousand and One Nights"

1. 第 1 曲 : 海とシンドバッドの船 1. The Sea and Sindbad's Ship

2. 第 2 曲 : カレンダー王子の物語 2. The Story of the Calender Prince

 3. 第 3 曲 : 若い王子と王女 3. The Young Prince and the Young Princess

 4. 第 4 曲 : バグダッドの祭り―海―船は青銅の騎士のある岩で粉々になる(難破)

4. Festival at Baghdad The Sea The ship goes to pieces against a rock surmounted by a bronze warrior (The Shipwreck)

 

モデスト・ムソルグスキー Modest Mussorgsky

組曲《展覧会の絵》 » Pictures at an Exhibition «

(モーリス・ラ ヴェル編曲) (Orchestration: Maurice Ravel)

5. プロムナード Promenade

6. 小人 Gnomus

 7. プロムナード Promenade

8. 古城 Il vecchio castello

9. プロムナード Promenade

 10. テュイルリーの庭 Tuileries

11. ビドロ(牛車) Bydlo

12. プロムナード Promenade

 13. 卵の殻をつけた雛の踊り Ballet of the chickens in their shells

14. サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ Samuel Golden berg and Schmuyle

15. リモージュの市場 The market place at Limoges

16. カタコンベ(ローマ時代の墓) Catacombae (Sepulcrum romanum)

 17. 死せる言葉による死者への呼びかけ Cum mortuis in lingua mortua

18. 鶏の足の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー) The hut on fowl's legs (Baba Yaga)

19. キエフの大門 The great gate at Kiev

 

[演奏]

ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン・ ソロ)[ 1ー 4 ] Rainer K ü chl, Solo Violin [ 1 ー4 ]

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 Wiener Philharmoniker

指揮:アンドレ・プレヴィン Conducted by Andr é Previn

 

[録音] [シェエラザード] 1981 年 12 月 10 日〜 11 日

[展覧会の絵] 19 85 年 4 月 2 0 日〜 21 日(ライヴ・レコーディング)

 ウィーン、ムジークフェラインザール

 

 [初出] [シェエラザード] 411 4791 (1982 年 [展覧会の絵] 416 2962 (19 86 年)

[日本盤初出] [シェエラザード]【 LP 】 28PC60 (1982 年 10 月 【 CD 】 35CD141 (1985 年 1 月

[展覧会の絵] 32CD412 (1986 年 6 月

 

 [オリジナル・レコーディング]

[プロデューサー][レコーディング・エンジニア] 初出盤には記載なし

[ Super Audio CD プロデューサー] 大間知基彰( エソテリック株式会社

[ Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 東野真哉(エソテリック株式会社)

 [ テクニカルマネージャー 加藤徹也(エソテリック 株式会社)

[解説] 諸石幸生 浅里公三

 [企画・販売] エソテリック株式会社

 [企画・協力] 東京電化株式会社