SACD ハイブリッド

デュメイとピリス 90年代、

世界を席巻した空前のデュオのエッセンスを封じ込めた 1枚。  

 
モーツァルト、フランク&ブラームス:

ヴァイオリン・ソナタ集

オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)

マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)  

価格:3,972円(税込)
ESSG-90219[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用

SOLD OUT!



■希代のモーツァルティアン、ピリス  

 

ポルトガル出身の女流ピアニスト、

マリオ・ジョアン・ピリス( 1944 年リスボン生まれ)が世界的な注目を浴びたのは

 1970 年のベートーヴェン国際コンクール優勝がきっかけでした。

 

そしてレコーディング・ アーティストとしてのピリスの名を大きくアピールしたのは

 1974 年初頭に約 1か月半をかけて東京イイ ノ ・ホールで録音された

モーツァルトのピアノ・ソナタ全集という大作。

日本コロムビアから発売されたこの 8 枚組の全集は

 PCM デジタル録音による世界初のモーツァルト・ピアノ・ソナタ全集であったのみならず、

ヨーロッパではフランスのエラート・レーベルで発売され

ADF ディスク大賞、エディソン賞など重 要なレコード賞を受賞し、

同時期にエラートに録音した LP4 枚分のピアノ協奏曲集とともに、

まだ 30 歳になったばかりの「新しい世代のモーツァルト弾き」としての

ピリスの姿を鮮烈に印象付けたのでした。

 

その後 LP 時代はエラートに古典派からロマン派のレパートリーを録音し、

1989 年にエラートからドイ ツ・グラモフォンに移籍したピリスは、

モーツァルトのピアノ・ソナタ全集の再録音を皮切りに、ソロ、コン チェルト、

そして室内楽のレパートリーに積極的に取り組むことになります。

 




2 度目のモーツァルト全集からのベスト選曲     

 

そのパートナーとなったのが、フランコ・ベルギー派のヴァイオリニスト、

オーギュスタン・デュメ イ( 1949 年パリ生まれ ) でした。

 

彼は、両親に連れられて聴きにいったナタン・ミルシテインの演奏会がきっかけで

3 歳でヴァイオリンを始め、 10 歳でパリ音楽院に入学、 13 歳で卒業するという神童でした。

14 歳の時 モントルー音楽祭で開いたリサイタルをシェリングとシゲティによって高く評価され、

シェリングの推薦で南米ツアーに赴いた。

 

帰国後、デュメイはミルシテインに師事し、

さらにアルテュール・グリュミオーのもとで 4 年間研鑽を積みました。

それ以後は、コンクールを経ずに評価を高めていきました。

デュメイがレコーディング面で注目されるのは

 1970 年代後半に EMI によって制作された

「フォーレ:室内楽全集」 でヴァイオリン・パートを担ったことで、

その艶のある音色や巨体から繰り出される自由自在で大きなボウイングによって、

日本でも大きな人気を博したのでした。

 

以後 1980年代前半まではフランス EMI に協奏曲、

名手ジャン = フィリップ・コラールとのデュオ(フランク、マニャール、ブラームス)、

シューベルトの ピアノ三重奏曲なども録音しています。

デュメイとピリスは 1990年代初頭に出会い、試奏したベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタで、

音楽に対する方向性が全く同じであることに感激し、共演を重ねるようになりました。

 

それに合わせてピリスが専属契約を結んでいたドイツ・グラモフォンからデュオ・アルバムを発表し、

モーツァルトのソナタ集を皮切りに、ブラームス、グリーク、フランスもの、

そして 2002 年のベートーヴェン全集まで、

デュ オ・レパートリーの一部を立て続けに録音したのでした。

豊麗でエレガントなデュメイのヴァイオリンと

シャープで知的なピリスのピアノとによるデュオの評価は大きく高まりました。

 

私生活面でもパートナーとなった二人の音楽的な個性は異なるものの、

その異質なものの重なりが触発しあって新たな方向性を生み出し、

理想のデュオ・パートナーとして絶賛されるに至ったのです。

二人がドイツ・グラモフォンに録音したデュオ ・アルバムから、

最も充実した出来と評価されている 3曲をエソテリック 独自にカップリングしたのが当アルバムで、

古典派のモーツァルト、フラン コ・ベルギー楽派の代表人フランク、

そしてドイツ・ロマン派のブラームスというレパートリーが選ばれています

 





最高の状態での Super Audio CD ハイブリッド化が実現     

 

録音はリスボンのグルベンキアン財団と

ミュンヘンの音楽学校のホールという 2カ所で行われていますが、

録音会場による差異は、前者の方が響気が若干少なく、

音像がややインティメートに作られているという点くらいでしょう 。

 

左右のスピーカーいっぱいに広がるピアノの前に艶っぽいヴァイオリンが浮かび上がります。

オリジナルがデジタル録音であるため、本格的なリマスタリングが行われるのは、今回が初めてとなります。

今回の Super Audio CD ハイブリッド化に当たっては、 これまで同様、

使用するマスターテープの選定から、 最終的な DSD マスタリングの行程に至るまで、

妥協を排した作業が行われています。

特に DSD マスタリングにあたっては、 DA コンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、

入念に調整された ESOTERICの最高級機材を投入、

 また MEXCEL ケーブルを惜しげもなく使用することで、

オリジナル・ マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。

 


「自由闊達でありながら、音楽の構成をしっかりと描き切った演奏」     

 

「デュメイとピリスはともにラテン的な感性を持ち、

それが合わさって従来の重厚なイメージのブラームスの音楽を大きく塗り替えることに成功した。

洗練された表現によって美しく旋律を歌わせるデキュメイ に対し、

ピリスのピアノはもっと磨き抜かれた切れ味の鋭さがあるのだ。

その両者の違いが時に協奏的に個性を主張し、デュオをより重層的なものにしているのである。

ブラームスの音楽の構造をしっかりと 守りながら、そこに巧みに色彩を付与したこの演奏を、

南の世界への憧れを抱いていたブラームスが 聴いたならばきっと大いに喜んだことだろう。」

(ブラームス)

 

 「フランクのソナタは作品がもつ多面的な魅力を余すところなく表現し尽くした名演だ。

これほど自由闊達でありながら、音楽の構成をしっかりと描き切った演奏は滅多にない。

デュメイのしたたるような美 しい音色にピリスのクリスタルの輝きを持つピアノが絶妙の対比を形成するとともに、

高次元で一つの 統一された世界を実現している。

それはヨーロッパの諸文化を統合したようなフランクの音楽にぴったりだ。」

(フランク)

(『 ONTOMO MOOK クラシック名盤大全 室内楽曲編』、 1998 年)

 

「デュメイはラテン的で洗練された表現力と包容力豊かな音楽性、

磨き抜かれた美音を駆使して、上品で味わい深い音楽を語り継いでいくヴァイオリニスト。

ピリスは明快なタッチによる清冽な音と響き、

シャープな感受性と緻密な表現力で集中力の高い演奏を聴かせるピアニストである。

本質的に異質の 二人が密度の濃いデュオを実現させ、個性豊かなブラームスを繰り広げている。

デュメイの語り口はのびやかで、ふくよかな表情が美しい。

ピリスは感覚の冴えを見せ、音楽を引き締めている。」

(ブラームス)

 「ピリスの美しく誠実な音、そして深い思索は、人間にとっての音楽の意味を教えてくれるようだ。

一方 のデュメイも同様の資質と言え、技巧はもとより、感性が天性の音楽家であり、

それが愛するヴァイオリ ンという楽器で発揮されているような気がする。

高い気品の中にヒタヒタと寄せてくる精緻な訴え。室内 楽を聴く喜びに満たされる。」

(フランク)

(『クラシック不滅の名盤 800 』、 1997 年)

 

「デュメイとピリスが達成したブラームスのヴァイオリン・ソナタは、

鋭敏な感覚を持つ 2人の感性が、互いの動きを洞察しながらおのずと接点を見出していくという、

スリルに満ちたデュオを展開しており、そこには従来の重厚なブラームスの面影は微塵もなく、

全く新たな切れ味の鋭い、研ぎ澄まされたブラームスの美の世界に聴く者を誘ってくれる。

2 人の微妙な感覚の相違は、時に協奏的な動きを生み、 時には巧みな色付けを施して、

想像だにしない新鮮なブラームス像を生み出している。」

(『レコード芸術選定クラシック不滅の名盤 1000 』、 2007 年)

 

「デュメイ、ピリスとともにレコーディング・アーティストとして絶頂期にあった時代の幸福な記録。

何より 演奏全体に横溢するロマンティックな感興の盛り上がりと、

作品の魅力を全開にするデュオとしての相 互作用にぐいぐい引き込まれる。

水も滴るような艶っぽい美音を駆使して朗々と歌い上げるデュメイ、

クリーンで清楚な歌い口の中にも燃えるようなドラマを内包するピリスと、

それぞれの高い充実度が触発しあって、円満な果実に昇華したのだろう。

響と質感が美しい録音も、大きな加点要素となっている。」

(ブラームス)

 

「私が今まで聴いたヴァイオリンとピアノによるデュオの中で、両者が対等で、

しかも両者の長所が共演することによってさらに増幅され、 1+1 が 3 にも 4 にもなる真のデュオは、

デュメイとピリスのデュオにと どめを刺すといっても決して過言ではない 。

彼らがデュオを組んだのは残念ながらそう長くはなかったが、

残された最高の成果の一つがこのフランクである。

グリュミオーの衣鉢を継ぐデュメイの比類のない 美しい音色、

ピリスの作品の内実を引き出す深い響きと細やかな表現、互いの表現に即座に反応する対話の妙、

これらが相俟って生み出されるフランス的な香気やエスプリの響きは、

作品の真実を照らし 出して余すところがない。」

(フランク)

(『最新版・クラシック不滅の名盤 1000 』、 2018 年)

 

 


■収録曲

モーツァルト

 ヴァイオリン・ソナタ 第 28 番 ホ短調 K. 304 ( 3 00c )

 1. 第 1 楽章 アレグロ

2. 第 2 楽章 テンポ・ディ・メヌエット

 

フランク

ヴァイオリン・ソナタ イ長調

 3. 第 1 楽章 アレグロ・モデラート

 4. 第 2 楽章 アレグロ

5. 第 3 楽章 レチタティーヴォ〜ファンタジア:モデラート ―― モルト・レント

6. 第 4 楽章 フィナーレ トレ・ザニメ

 

ブラ−ムス

 ヴァイオリン・ソナタ 第 1 番 ト長調 作品 78 《雨の歌》

 7. 第 1 楽章 ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ

 8. 第 2 楽章 アダージョ

9. 第 3 楽章 アレグロ・モルト・モデラート

 

 オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)

 マリア・ジョアン・ ピリス(ピアノ)

 

 [録音] 1990 年 7 月& 8 月、リスボン、カステル・グルベンキアン財団(モーツァルト)、

 1993 年 9 月& 10 月(フランク)、 1991 年 8 月(ブラームス)、ミュンヘン、音楽大学、グロッサー・ザール

 

[初出] 431 771 - 2 (モーツァルト /1991 年)、 445 880 - 2 (フランク /1995 年)、

435 880 - 2 (ブラームス /1992 年)

 [日本盤初出] POCG1489 (モーツァルト /1992 年 1 月 25 日)、

 POCG1896 (フランク /1995 年 7 月 26 日)、 POCG1618 (ブラ ームス /1992 年 10 月 25 日)

 

[オリジナル・レコーディング]

[エグゼクティヴ・プロデューサー]クリストファー・オールダー(フランク)

[プロデューサー]クリストファー・オールダー(モーツァルト、ブラームス)、アーレント・プローマン(フランク)

[バランス・エンジニア]ヘルムート・バーク(モーツァルト、フランク)、グレゴール・ツィーリンスキー(ブラームス)

 [レコーディング・エンジニア]ヴォルフ = ディーター・カルヴァトキー(フランク)

[エディティング]ヴォルフ = ディーター・カルヴァトキー(モーツァル ト)、ナルク・ベッカー(フランク)

 

 [ Super Audio CD プロデューサー]大間知基彰(エソテリック株式会社)

 [ Super Audio CD リマスタリング・エンジニア] 杉本一家( JVC マスタリングセンター ( 代官山スタジオ ) )

 [ Super Audio CD オーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)

 [解説] 諸石幸生 柴田龍一

 [企画・販売]エソテリック株式会社

[企画・協力]東京電化株式会社