SACD ハイブリッド

これぞ黄金の本流。
ウィーン・ピアノ楽派を継承するグルダが完成させた、
録音史上もっとも正統的なベートーヴェン全集。
シュタイン/ウィーン・フィルの濃厚で雄弁なバックアップも見事。

 

限定2500セット  3枚組BOX
 
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲全集
 
フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
ホルスト・シュタイン(指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


価格:9,429円(税別)
ESSD-90102-04(3枚組)[SACD Hybrid]
DSD MASTERING
Super Audio CD層:2チャンネル・ステレオ[マルチなし]
美麗豪華・紙製デジパック・パッケージ使用


SOLD OUT!




 

自由気ままに自分の音楽を紡ぎ続けたグルダ

 1970年にウィーン音楽大学の若き教授たちによって結成され、アルバン・ベルク未亡人の同意を得て、20世紀ウィーンが生んだ最も重要な作曲家の名を冠したアルバン・ベルク四重奏団。

20世紀を代表するウィーン出身の巨匠ピアニスト、
フリードリヒ・グルダ(1930.5.16-2000.1.27)は、ウィーン音楽院で名教師ザイドルホーファーに学んだウィーン・ピアノ楽派生え抜きの正統派であるとともに、クラシックの枠内にとどまらないクロスオーバーな演奏・作曲活動(いずれもおもにジャズの分野で)で知られています。

 1946年、16歳でジュネーヴ国際コンクールに優勝した天才で、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンを中心としつつもレパートリーは幅広く、1960年代はイェルク・デームス、パウル・バドゥラ=スコダとともに「ウィーンの三羽烏」と称されたこともあります。しかし学究肌でオリジナル楽器の演奏などにも手を染めたデームスやバドゥラ=スコダとは異なり、独自の感性に従って振る舞い、自由気ままに自分の音楽を紡ぎ続けたのがグルダでした。
  

 


グルダの最も重要な録音遺産  
 
   グルダは1950年代から録音を開始し、その足跡をデッカ、MPS、アマデオなどさまざまなレーベルに残していますが、無計画とも思えるその数多い録音歴の中で、クラシック・ジャンルでは、バッハの「平均律」全曲(1972年〜73年)、2種類のベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集(1950年代と1967年))と並び、グルダの最も重要な遺産ともいうべき演奏が、
今回世界で初めて(※)Super Audio CDハイブリッド化される、1970年〜71年にデッカに録音されたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集です。

※2014年6月現在



まさに純正統派のベートーヴェン解釈  
 
  グルダは1950年代のモノラル時代に、デッカにベートーヴェンのソナタ全集を始め、
協奏曲やソロ、歌曲の伴奏にいたるまで、かなりまとまった録音を残しています。

その後は、MPSやアマデオなど他レーベルへの録音がメインになったため、このベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、ひさしぶりのデッカ復帰録音となりました(1966年のマゼール/ウィーン・フィルのシュトラウス「町人貴族」のピアノ・ソロ・パートに参加したことがあります)。

 当時40代になったばかりで心技ともに脂の乗り切ったグルダが、1967年のソナタ全集に続いて真正面から本気で取り組んだベートーヴェン・プロジェクトの第2弾となったもので、ザイドルホーファーに伝授されたウィーン・ピアノ楽派の伝統の担い手としての矜持を感じさせる、まさに純正統派のベートーヴェン解釈が刻み込まれている点が特徴です。

 全体は早めのテンポで進められますが、あらゆる音符がグルダのものとして消化され、有機的・音楽的な連関性はこれ以上望むべくもないほど。

 しかもデリケートで緻密なニュアンスが満載。モーツァルトの作品ではジャズ的なリズムの崩しや即興を取り入れていたグルダですが、ここではそうした扱いは微塵もなく、カデンツァは全てベートーヴェン作のものが選ばれていることも、グルダの真剣な取り組みようが伺い知れます。

 第1番・第2番のモーツァルト的な愉悦に隠されたベートーヴェンらしい野性味の表出、
第3番としては小味な解釈ながら存分に伝わってくる躍動感、第4番の美しくかつ深みのある音色、そして第5番に横溢する王者のような壮麗な風格など、作品に求められるイメージをこれ以上ないほどに的確に描き出しています。使用ピアノはおそらくベーゼンドルファーと思われます。

ウィーン・フィルハーモニーの濃厚かつ雄弁なバックアップ  
 
  そしてそのグルダの音楽的なソロを十全にバックアップしているのが、グルダとほぼ同年配だったホルスト・シュタイン(1928-2008)指揮するウィーン・フィルハーモニーの濃厚かつ雄弁なオーケストラ・パートです。

 シュタインはクナッパーツブッシュやヴァントなどドイツの名指揮者を輩出したエルバーフェルトの出身で、このグルダとの共演録音のころは、ちょうどバイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場での卓越したオペラ指揮者としての活動を開始し始めたころに当たっていました。
 デッカに1970年代を通じてウィーン・フィルやスイス・ロマンド管との名盤を残していくことになるきっかけとなったのが、このグルダとのベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集での大きな芸術的成功にありました。
 シュタインは、まるで若き日のカール・ベームを思わせるような意志的な解釈のもと、ウィーン・フィルからコクと立体感のある響きを引き出しています。



最高の状態でのSuper Audio CDハイブリッド化が実現    
 
 録音は、デッカが1950年代半ば以降ウィーン録音の根城としたゾフィエンザールで行なわれています。このホールの木質の温かみのある響き、適度な残響は、細部の一音に至るまで明晰に収録しようとする同社の録音ポリシーには理想的な会場で、そこでの録音は、オーケストレーションの綾や空間性を生々しく再現する骨太なデッカ・サウンドの代名詞ともなりました。

 独奏ピアノを不自然なほどにクローズアップせずとも細部のニュアンスとソロ楽器としてのプレゼンスを保つことができ、しかもオーケストラのマスとしての余裕のある響きも確保されています。エンジニアは練達のゴードン・パリーとジェームズ・ロック、そして全体を統括プロデュースしているのは、60年代〜70年代にデッカで活躍したデイヴィッド・ハーヴィー(代表作はショルティ/シカゴ響がヨーロッパ楽旅中にゾフィエンザールで録音したマーラーの「千人の交響曲」)です。

 ウィーン・フィルがゾフィエンザールでステレオ録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は、このグルダ/シュタイン以外には、1950年代のステレオ初期のバックハウス/シュミット=イッセルシュテット盤、1980年代のデジタル初期のアシュケナージ/メータ盤しかなく、その中でアナログ録音の最盛期に収録されたグルダ盤は音質面で最高のバランスを実現していると言っても過言ではありません。

 今回のSuper Audio CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。

 特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、貴重な音楽情報を余すところなくディスク化することができました。



『音楽する喜びがそのままストレートに伝わってくるかのような演奏』     
 
 「いかにもグルダらしい、音楽する喜びがそのままストレートに伝わってくるかのような演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の数多いレコードの中で、これほど愉悦感に満ち溢れた演奏というのも珍しい。感興の赴くまま、自由奔放に弾きあげていながら、それでいて決して情緒におぼれないというのも彼の長所である。シュタインの指揮はスケールが大きく、オーケストラのコントロールも十分で、すこぶる健康的だ。」
(志鳥栄八郎、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)
 

 「特に初期の第1番、第2番、第3番の演奏は見事である。これらの曲は、グルダ独特の語りかけで奏され、ベートーヴェンの曲に新鮮な感覚を盛り上げている。巧みなリズム処理、ときとして意表を突く強弱の変化によって彩られたグルダの演奏には、今の世の条理が息づいている。」
(渡辺茂、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)

 
 「第4番は全3楽章ともに平衡感のつよい造形で、テンポ、デュナーミク、細部のエクスプレッションのすべてにわたって中庸を得ており、まったく無理がない。つまりグルダの強烈な個性は押さえられているわけだが、それでも作品の優美さとともに、適度の線の太さが男性的ともいえるたくましさを伴って示されている。シュタインとウィーン・フィルの演奏は模範的と言えるほどである。」
(小石忠男、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)

 
 「グルダの皇帝は、いかにもみずみずしく陰影が美しい。粒立ちのよいくっきりと冴えた音によって、決して肩いからせることなく常に伸びやかなスケールをもった表現を繰り広げており、その演奏は大変にデリケートであるとともに、あくまで余裕を持った力によって熱く裏打ちされている。特に演奏の隅々まで行きわたったしなやかな感興をたたえた表現は、何とも新鮮な魅力を持っている。シュタインも、ウィーン・フィルの能力を無理なく生かして、充実した響きと表現でグルダを支えている。」
(歌崎和彦、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.3協奏曲編』、1985年)

  
 「グルダの個性がありのままに提示されていて、誰もまねのできない演奏をしている。健康で、現代的、ベートーヴェンやその時代にはおもねないし、指揮者のテンポの指定にもそのままでは追従していない。むしろオーケストラが、グルダについているようだ。」
(村田武雄、『レコード芸術別冊・不朽の名盤1000』、1984年)

 


■収録曲

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
ピアノ協奏曲全集


DISC 1
ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15

1. 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ
2. 第2楽章 ラルゴ
3. 第3楽章 ロンド、アレグロ
ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品19
4. 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ
5. 第2楽章 アダージョ
6. 第3楽章 ロンド、モルト・アレグロ


DISC 2
ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37

1. 第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ
2. 第2楽章 ラルゴ
3. 第3楽章 アレグロ
ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 作品58
4. 第1楽章 アレグロ・モデラート
5. 第2楽章 アンダンテ・コン・モート
6. 第3楽章 ロンド、ヴィヴァーチェ


DISC 3
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」

1. 第1楽章 アレグロ
2. 第2楽章 アダージョ・ウン・ポコ・モート〜アタッカ
3. 第3楽章 ロンド、アレグロ


[演奏]

フリードリヒ・グルダ(ピアノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ホルスト・シュタイン


[録音] 1970年6月、1971年1月、
ウィーン、ゾフィエンザール

[日本盤初出]
[分売] SLC-2225〜8(1972年5月〜8月)、
[全集]SL-1059〜62(1973年12月)

[オリジナル/プロデューサー] デイヴィッド・ハーヴィー
[オリジナル/レコーディング・エンジニア] ゴードン・パリー、ジェームズ・ロック
[Super Audio CDプロデューサー] 大間知基彰(エソテリック株式会社)
[Super Audio CDリマスタリング・エンジニア] 杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社、マスタリングセンター)

[Super Audio CDオーサリング] 藤田厚夫(有限会社エフ)
[解説] 諸石幸生 浅里公三
[企画/販売] エソテリック株式会社
[企画/協力] 東京電化株式会社