エソテリックならではのこだわりのSACDハイブリッド・ソフト
オリジナル・マスター・サウンドへの飽くことなきこだわりと、Super Audio
CDハイブリッド化による圧倒的な音質向上で高い評価を得ているエソテリックによる名盤復刻シリーズ。定評のある名盤を高音質マスターからリマスタリングし、世界初のSuper
Audio CDハイブリッド化を実現します。
■ベルリン・フィルの機能が極限まで発揮されたバルトーク
カラヤンがその生涯でスタジオ録音を行なったバルトークのオーケストラ作品は「管弦楽のための協奏曲」と「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」の2曲だけでした(実演では、ピアノ協奏曲第3番など、ほかの作品も取り上げています)。当アルバムに収録された「管弦楽のための協奏曲」は、カラヤンが残した3種類ある録音のうち最後のもので、1974年に収録されました。
ローター・コッホ(オーボエ)、ジェームズ・ゴールウェイ(フルート)、カール・ライスター(クラリネット)、ゲルト・ザイフェルト(ホルン)、コンラディン・グロート(トランペット)など、木管・金管に綺羅星のごとき名手を擁していた時期にあたり、最晩年のバルトークがその作曲技術の粋を尽くして書き上げたオーケストラ機能のデモンストレーション曲ともいうべき「管弦楽のための協奏曲」を演奏するにはうってつけの布陣でした。ちょっとしたソロにも入魂の名人芸が披露され、パート間のバランスも完璧なまでに整えられた豊潤・流麗なバルトーク演奏は、ジャケットに使われている革ジャンを着たスタイリッシュなカラヤンのイメージにまさに相応しいものでした。
録音はベルリン・フィルが本拠地としていたベルリン・フィルハーモニーで行われ、絶頂期のベルリン・フィルでしか成し得ないゴージャスな響きが見事に捉えられています。特にひそやかなピアニッシモから豪壮なフォルティッシモにいたるダイナミック・レンジの広さは見事です。
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カップリングはEMI録音第1期を締めくくる「弦・チェレ」の名演
カップリングの「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」は、カラヤンの2種類ある録音のうち1960年に録音された2度目のものにあたります。録音会場は、20世紀初頭に建てられ、EMIが1950年代後半にさまざまな録音に使用していたベルリンのグリューネヴァルト教会で、イエス・キリスト教会と並んで優れた音響効果で知られていました。この録音を最後にカラヤンは当時契約を結んでいたEMIを離れたため、1947年から続いてきたカラヤンの第1期EMI時代を締めくくる録音ともなりました(復帰するのは9年後の1969年。ちなみにカラヤンによるグリューネヴァルト教会での録音もこれが最後となりました)。
この作品は、弦楽パートを2つに分けて指揮者の左右に対称的に配置するという指示があり、左右のパートのかけ合いの面白さが聴きどころのひとつですが、この録音では過度にそうした左右の分離感を強調するのではなくむしろアナログ時代のEMIらしい自然な空間性を感じさせる音づくりで、重厚で精気みなぎる60年代のカラヤンとベルリン・フィルの充実した響きを捉えています。
■ 最高の状態でのSuper Audio
CDハイブリッド化が実現
今回のSuper Audio
CDハイブリッド化に当たっては、これまでのエソテリック企画同様、使用するマスターテープの選定から、最終的なDSDマスタリングの行程に至るまで、妥協を排した作業が行われています。特にDSDマスタリングにあたっては、DAコンバーターとルビジウムクロックジェネレーターに、入念に調整されたエソテリック・ブランドの最高級機材を投入、また同社のMEXCELケーブルを惜しげもなく使用することで、オリジナル・アナログ・マスターの持つ情報を余すところなくディスク化することができました。
1974年の「管弦楽のための協奏曲」と1960年の「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」を1枚に組み合わせることで、フィルハーモニーとグリューネヴァルト教会という録音会場の効果の差異、ミシェル・グロッツとヴォルフガング・ギューリヒ・コンビによる70年代のダイナミックで壮大な音づくりと、ウォルター・レッグによる(エンジニア不明)60年代の自然なバランスによる音づくりの差異などを、これまで以上に明確に聴きとることができます。
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精緻なアンサンブルの妙技と豊かな色彩感覚
【管弦楽のための協奏曲】
『カラヤンは作品に対しての客観的分析と主観的共感をほどよく混ぜ合わせたような演奏を行っている。このレコードは、カラヤンにとって3回目の録音だが、本質的に前2回と大きな差異はないものの、音楽はより一層、精妙さと優美を加えており、ベルリン・フィルの高度な合奏技術がそれらを実に見事に表現している。まことに美しいバルトークなのである。』
(金森昭雄、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.2管弦楽曲編』1985年)
『カラヤンはベルリン・フィルのヴィルトゥオジティを最大限に生かしている。その精緻なアンサンブルの妙技と豊かな色彩感覚、あるいはリズムの多様性などは無類であるが、カラヤンはそうした表面的な名技的なおもしろさと喜遊性だけではなく内面にも鋭く迫っており、とくに第3楽章「悲歌」における高貴な美しさは感動的である。』
(浅里公三、『レコード芸術・別冊・不朽の名盤1000』1984年)
『カラヤン、ベルリン・フィルによる2度目の《オケ・コン》である。これ以降この曲の新録音はなく、たぶんこの演奏はカラヤンの満足ゆくものであったのではないかと思う。それはこの演奏を聴けば明らかであるが、全体は極めて緻密かつ壮麗に仕上げられており、オーケストラの機能的な面からも、また音楽的な表現の面からも最高の効果が発揮された演奏である。録音された1974年は、このコンビのもっと充実した(円熟期と言ってよいかもしれない)時期であり、前日の高次のレヴェルでの演奏内容に加えて、演奏を「楽しむ」、一種のゆとりが全編に感じられる。第2楽章「対の遊び」はまさにその精神で音楽的表情をさらに豊かにしている。』
(草野次郎、『クラシック不滅の名盤1000』、2007年)
【弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽】
『カラヤンの丹念緻密な音楽づくりが最良の結果をもたらしたものの一つである。このバルトークの作品は、音楽自体、かなりの緊張感を持っているもので、張り詰めた感じの演奏が多いものだが、ここでのカラヤンは、磨き抜かれた美しい音色を基調とし、柔らかさとゆとりをもつ演奏に仕上げている。』
(金森昭雄、『レコード芸術別冊・クラシック・レコード・ブックVOL.2管弦楽曲編』1985年)
■収録曲
ベラ・バルトーク
管弦楽のための協奏曲Sz.116
1: 第1楽章: 序奏
アンダンテ・ノン・トロッポ〜アレグロ・ヴィヴァーチェ
2: 第2楽章: 対の遊び アレグレット・スケルツァンド
3: 第3楽章: 悲歌 アンダンテ、ノン・トロッポ
4: 第4楽章: 中断された間奏曲 アレグレット
5: 第5楽章: フィナーレ ペザンテ〜プレスト
弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽Sz.106
6: 第1楽章: アンダンテ・トランクイロ
7: 第2楽章: アレグロ
8: 第3楽章: アダージョ
9: 第4楽章: アレグロ・モルト
演奏
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
管弦楽のための協奏曲
[録音]1974年5月30日、ベルリン、フィルハーモニー
[初出]1C 065 02 536Q(1974年)
[日本盤初出]EAC-80023(1974年12月)
[オリジナル/プロデューサー] シェル・グロッツ
[オリジナル/レコーディング・エンジニア]
ヴォルフガング・ギューリヒ
弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽
[録音]1960年11月9日〜11日、
ベルリン、グリューネヴァルト教会
[初出] SAX2432
(1961年/ヒンデミット:交響曲「画家マチス」とのカップリング)
[日本盤初出] OS-3104
[オリジナル/プロデューサー] ウォルター・レッグ
[SACDプロデューサー]
大間知基彰(エソテリック株式会社)
[SACDリマスタリング・エンジニア]
杉本一家
(ビクタークリエイティブメディア株式会社 マスタリングセンター)
[SACDオーサリング]藤田厚夫(有限会社エフ)
[解説]諸石幸生 浅里公三
[企画協力]東京電化株式会社
[企画/販売]エソテリック株式会社